『武士ドルが斬る!?』〈前編〉
半田刑事を病室から見送り…残され私はふうと吐息をついた。
「本当に…いいの?」
「何が?」
今まで黙って様子を見ていた徳家君が呟いた言葉をあえて聞き返した。
「生駒さん…。
あの逃亡者に…車の上でお姫様抱っこされた時に…彼と交わした言葉…。
もう一度彼と会って話した方がいいと思うんだけど…。
彼も生駒さんに聞きたい事がって言ってたしさ。
このままで終わらせていいのかって思うよ。」
日本史以外に熱く語る徳家君に…心を見透かされている事を感じた。
「…私…。
あんまり…覚えてないんだ…。
ライダーに追っかけられた事は…恐怖で覚えているけど、その時にどんな事あったかなんて…サッパリなのよね。
私…そんな事されたんだ…。」
自分の気持ちに嘘をついた…。
本当は…バッチリ覚えてる。
今でもあの抱きしめられた腕の温もりは…あの夢の中でみた殿と同じ温もりだった。
それは…400年の時を越えても私の魂が覚えていた。
でも…彼は今も…。
この現代にきても…。
暗殺の危機にさらされている事実を知って…今の私が何かしてあげれる事といえば…彼の命を狙う者達から彼を守ってくれる人に彼の身を預けて無事を祈る事しか出来ないと悟ったからだ。