『武士ドルが斬る!?』〈前編〉
決して…忘れたいわけでも…見放したいわけでもなく…それが私が彼にしてあげられる精一杯の形だった。
今…私に出来る事を精一杯するだけだ。
病室に重々しい空気が漂った。
「嘘ついてるって分かりやすいよね…。
生駒さんってさあ…。
本当は…どう思ってるの?」
「えっ…。」
徳家君は…クスクスと笑いながら私の潤んだ涙を拭った。
「こんな顔されたんじゃ…ねえ…。
最後だったら派手に気持ちぶちまけちゃえば?
そしたら…スッキリするよ!」
徳家君はクスクス笑う様子に意地悪な人だなあ…と苦笑いを浮かべて降参し気持ちを素直に語った。
「徳家君は…信長という人が…幼い頃から暗殺の危機にさらされている事知っているでしょう…?
彼が…本当に織田信長で…私の夢の中の殿なのかはわからないけど…こんな戦のない時代にきても…暗殺の危機にいるなんて不憫じゃない?
それに…今の私は…昔の私…吉乃だった頃みたいに、守ってあげられるような力もないし…暗殺から身を守ってあげられる場所すらない…ただの学生じゃない…。
だから…今は半田刑事や戸塚教授や権田教授に彼らの身を守ってもらうのが一番の得策だと思う。
それが例え…今後彼らに会えないにしてもそれで彼らの命が保証されるなら喜んで身を引く覚悟よ。
これで…納得してもらえる?」