『武士ドルが斬る!?』〈前編〉


 話を聞いて言葉を失い俯いた私達を見て殿は…一片のくもりもなく思いを語った。


 「わしには50という年月を生き延びる必要があった。


 その半ばで吉乃を失ったが…時を越えて生まれ変わった吉乃とやり直す事ができるなら悪魔でも鬼でも魂を売り飛ばしてもよいと思い…やってきたのだ!

 文字通り‥皆には鬼だなんだと語られたがのう‥。

 だから‥遅かれ早かれ…わしは50歳になるまでに‥天下統一を果たしその後は吉乃が生まれ変わる場所に行き…わしらが天下統一に捧げた日々を取り戻し失った日々の分を吉乃と生きると心に決めておった。
 本能寺にて‥光秀が裏切りを果たしてくれた時は‥嬉しさの余り“是非もない‥!”と叫んだぞ!!」



 明るく笑った殿の言葉に‥ますます複雑な心境になりながらも‥殿の思いの深さに打たれた。



「そんな事考えていたなんて…驚きだよな…。」


諷馬も愕然と殿の話に重く呟いた。



「まあ…計算外だったのは―――濃がついてきた事だったがな…。」



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