『武士ドルが斬る!?』〈前編〉
首だけは幸い動かせるので…壁側にかけてある時計を見上げた。
“‥6時半かあ‥。”
ふうと安堵の息をもらしながら‥私は少しずつ身をよがらせていると………。
“グイッ‥。”
‥と物凄い力で引っ張られた私は思わず右側に転がり硬い胸板に激突して鼻を強打した。
…いたい…。(泣)
ようやくほどかれて身動きをとれるようになった筈の身体を包み込むように逞しい腕に引き寄せられたまま強く抱きしめられた。
鼻をこすりつつ私は腕の中で見上げた先に‥片肘をついた状態で私を抱き寄せる殿の顔がすぐ近くにあり思わず赤面した。
「鼻が赤いぞ‥。
いかがした?」
ニマリとイタズラな笑みを浮かべる殿に私はぷうっ‥と頬を膨らませた。
「殿が‥突然私を引き寄せるから勢いで‥その胸にぶつかったというか‥なんというか‥。」
最初は強気な発言だったのに‥熱い瞳で見つめられた私は当初の勢いをなくしだんだん声が小さくゴモゴモと呟き最後には言葉を失ってしまった‥。