『武士ドルが斬る!?』〈前編〉
突然…“敦盛”の舞を永遠とクルクルと舞い続けて突然何か策を思いつき殿は策を決行させる為に必要な刺客を放って今川勢へと先に向かわせいざ出陣という時だ。
いつもは…「また来る!」とか「行ってくる」とか言い残し馬に飛び乗り帰っていかれる殿は…出陣を前にずっと夜半に浮かぶ月を見ていた。
「殿…?」
策を練った後だからもちろん慎重になっているのだろうと思ったのだが…殿は出入り口で足を止めたままいっこうに動く気配がなくただ月を見ているその様子に私は再度…“殿…?と尋ねようとした時…いきなり腕を引き寄せられ腰もとをつかみ身体を抱き上げると驚いた私の顔を見上げられた。
「吉乃…。
案ずるな…。
また来る…。」
短い言葉だったが…私はそんな殿に身体を抱き上げられたままで見下ろした。
「お帰りお待ちしております。」
殿は力強く頷き私の体を抱き留める腕に力を込めた。
私もそんな殿を見下ろしたままで彼の見上げた顔を胸に抱いて彼の頭を撫でた。
そして…私達はそのまま口づけを交わし再び殿は私を見上げた。
「ご武運を…。」
「うむ…。」
短い会話を交わしお互いの目を見張ったまま私達は…互いの心に誓い武運をかけた。