『武士ドルが斬る!?』〈前編〉
私をゆっくり下ろした後…。
近くに控えていた藤吉郎が差し出した草鞋を履き振り返らず戸口を出て馬に飛び乗った。
「…吉乃様…。
心配いらないです…。
わしらが…親方さまの盾になり必ず再び吉乃様のもとにお送り致します…。」
「サルッー!!!
早くしろっ!!!」
戸口の外で殿の怒鳴り声が聞こえた。
「藤吉郎も…くれぐれもお気をつけて…。
殿のためにご武運を…。」
藤吉郎は力強く頷きやがて慌てて外に出て行った。
その様子を見ていた兄…八右衛門が奥の部屋から出てきて私の肩にポンと両手を押した。
「殿も…少しは不安なのかもな…。
出かけに吉乃にあんな事して…不安を打ち消したんだよ。
だから…そんな不安そうな顔で見送るのはやめなさい。」
「兄上…。」
兄上は私の頭を撫でて共に殿達が去った後を見送った――――あの日の光景が私の頭上に鮮明に映像として蘇った。
私はあの時と同じく殿の頭を引き寄せて自分の胸に抱きしめ彼の髪を撫でた。