『武士ドルが斬る!?』〈前編〉
戸倉教授の話に息もつく暇もない程ただ驚きと困惑を繰り返した権田教授は大きな溜め息を漏らした。
「まるで…現代のねずみ小僧か五右衛門さながらな振る舞いだな…。
そんなに足跡残して逃亡者はどうしたいのやら…。」
呆れた口調で呟いた言葉に…戸倉教授も苦笑いを浮かべて答えた。
「…恐らくは…金判に気を引かせての囮作戦と服代を払ったつもりなんだろう…。
しかも…最初に被害にあった消防隊員の場合は下着にはさんであったようなんだ‥。
その金判を警察に見せてもらったら…その金判が室町時代から安土・桃山時代の物と一致した事から歴史的な大発見として注目されている事件でもあるんだ。
まあ…京都県警の署長もこの調査の件については、自分に任せてくれているから真相が分かれば…慎重に取り扱ってくれるとは思うが…彼等自身が人間重要文化財である事は確かだから…この事が明るみになると逆に混乱を招く事にもなるしな…。」
「確かに…。
大変な事態だな…。」
鼓動が激しく打ち鳴らされて…落ち着く為に権田教授は、近くにあったミネラルウォーターを一口含み喉を潤した。