『武士ドルが斬る!?』〈前編〉
殿は無言で受け取りながら…その名刺を見つめる姿に何となく心が痛んだ。
殿の可能性を信じていた昔…。
決して…そばにはいられなかったけど…不幸せではなかった。
むしろ…。
殿と私の間にかけがえのないに3人の子供を授けてくれてともに生駒の屋敷で暮らす事も許してくれた。
前の夫との間にできた3人の子供達も自分の養子として引き取ってくれた。
子供とともに暮らせるという事が女としてどんなに幸せな事だと考えてくれていたからだろう…。
だから…私は全然寂しくなどなかった。
ただ無事に殿が帰ってきてくれる事さえわかれば…それでもいいとさえ思っていた…遠い吉乃の思いが胸を締め付けてキュンとなった。
そう思ったら…。
「殿―――!
よいお話だしそのお話是非受けて下さい。
私も是非協力しますし…それにこんないい話めったにないですし…それにその思ってる女性だって応援してくれますよ…。
やりましょう!
その方の為にも引き受けてあげて下さい。」
思いが口をつき声をあげた。