『武士ドルが斬る!?』〈前編〉
「あっ…。
お先にどうぞ…!」
なんだか帽子から覗かせる鋭い視線で見られているように感じた私は…その男性に自販機を譲った。
「…かたじけない。」
その男性は…ペコリと会釈はしたもののいっこうにコイン口に硬貨をいれる様子はなく…ただ自販機の前に立ち横目でこちらを伺っている様子にもみえた。
“どうしたのかなあ?”
その様子に違和感を覚えた…私は声をかけようとした時…背後から肩を叩かれた。
「あっ…。
驚かしちゃってごめん…。
君…今日、日本史の講義で寝言言ってた子だよね!
俺…日本史サークルで君と同じ学科の徳家 康倖〈トクヤ ヤスユキ〉!
ちなみに‥君と同じクラスだけどね…!」
恐る恐る振り返った私の背後に立つ少し細身の男性は、細身の長身にあどけない笑顔をのぞかせ自己紹介された。
「あっ…。
そうなんだ‥!
なんだか‥恥ずかしいなあ‥!
みんなに寝言聞かれちゃってさあ‥!」
私は顔を赤らめて頭をかきながら‥先程の男性の視線を背後で受けつつ答えた。