『武士ドルが斬る!?』〈前編〉
「まあ…確かにあそこにいた生徒に聞こえる程…大きな声で寝言いってたからね。
でも…自分としては、いろんな寝言聞いた事あるけど…“殿”っていう寝言聞いたの初めてだよ‥。
日本史マニアとしては…擽られたけどね…(笑)」
悪戯な笑みを浮かべて今日の講義での事を茶化した。
“アハハ…。”と乾いた笑い声を弾ませながら背後の人物が殺気だった視線で凝視しているのを感じ身を震わせた。
「ちょっと…あんた!
まだ…決まんないの?」
背後からおばさんの声がして私は振り返り様その帽子を目深に被った男性の顔色が険しくなったのをみかけいたたまれずに声をかけた。
「どうかなさったんですか?」
私の声におばさんがすぐさま答える。
「どうもこうもないわよ…!
自販機の前にボケッと突っ立ってるんだから!」
吐き捨てるように彼を睨みつけたおばさんを帽子の向こうから見え隠れする鋭い視線が殺気だったように見えて私はその男性に声をかけた。
「あっ…!こっちのコーヒー挽きたてだから美味しいですよ!」