『武士ドルが斬る!?』〈前編〉
明石少年と目が合い彼は私から目を背けて俯くその姿に私はトラックの荷台から降りて明石少年のそばに歩みより手を差し伸べた。
「明石くん…!
おいで…。」
「えっ…。」
私が差し出した手を伸ばし明石少年を連れて二人の前に連れていった。
「ちゃんと…。
自分の口で伝えて…!」
「自分の口で伝える?」
明石くんは私の言葉に俯き意を決したように二人に向き直った。
「パパ…。
ママ…。
いや…忠興、玉…。
ずっと気になってた…。
本能寺の変…以降2人はどうなったのかと…中国大返しを果たし羽柴軍の追っ手がはびこる中…息絶える寸前まで2人の事が気になっていたんだ…。
もっと早く思いだせば良かったよ…!
忠興と縁談が決まった日の事…。
2人揃っての祝言の事…。
妻、煕子〈ヒロコ〉と共に一族の安泰と4人で祈願しに行った日の記憶が蘇ってきて…なんて…バカな事をしたのかって思えてきて…。
自分の罪は許されないかもしれないけど…2人には現世で前世で果たせなかった夢を果たして欲しいって願って…ただ…それだけを願って…死んだ。」