『武士ドルが斬る!?』〈前編〉
濃君は忍びの一味を鋭く切れるよう瞳で睨みつけた。
「何だって…彼が…魔王の書を?」
建物の上部に見える黒い人影を見上げた私は先程のKen-sinとの会話のやり取りを思い出していた……。
そういえば…自分がこの世界で音楽を通じて認められる事に対して珍しく不安気な事を語っていたのを思い出す…。
「―――何かお心当たりでも………?」
そんな様子を見つめながら濃君はまるで急かすように尋ねた。
「あっ……。
いや…。
何でもないの…ただ…。」
ほんとは言うべき言葉なのかもしれない…。
でも…私は言葉を飲み込んだ。
――彼はあの時…この時代で少なくとも音楽で認められつつある状況に戸惑いを感じ…不安を抱いているように会話や仕草からも受け取れる節はあった……。
――ちょっと待って……。
魔王の書と音楽に対するこの時代での…戸惑い…もしかして………。
私は唇をキュッと結ぶ。