『武士ドルが斬る!?』〈前編〉
あのお方が15歳のある日…。
「これで‥よし!」
積み荷を下ろし戻ってきた馬の体を洗い流し馬屋に戻ってきた私は‥一息つこうと馬屋を後にした。
自宅の入り口をくぐろうとした時だった。
荒々しい馬の地面を蹴り上げる音が聞こえ白馬が現れる。
これが‥私とあのお方との出会いだった。
あのお方は‥当時15歳で尾張国(現在の愛知県)古渡城主 織田信秀公の嫡男としてお生まれになりわずか2歳で那古屋城主となられたそのお方の名は織田信長様と申されました。
「八右衛門はいるか!?」
プッ‥と草楊枝を口にくわえていた葉を地面に吹き付けて馬から飛び降りた殿は‥私に馬の手綱を差し出し声を荒げた。
「ええ‥。
しばしお待ちを‥。
兄上‥!
兄上‥!」
手綱を受け取りながら玄関先より兄上を呼び声をあげると屋敷の中より兄‥八右衛門が姿を現した。
「殿‥!
これは‥。
これは‥。
どうぞ中へ‥。」
「うむ‥。」
私は手綱を預かり一礼して殿を見送った。