『武士ドルが斬る!?』〈前編〉
無理矢理話をこじつけて‥私を奥に引っ込めようとした兄上をみて‥殿はいきなり立ち上がった。
「吉乃!
湯漬けをここに‥!」
「は…はい…。
ただいま…。」
縁側に突然腰を下ろし床に湯漬けのお膳を置くようにすすめられ…退散しようとしていた足を止め踵を返し殿の前に湯漬けのお膳を置いた。
「戸を開けろ!!」
縁側の戸を今度は‥開けるように言われ言われるままに縁側の戸を開けた。
「次は…?」
殿が言われるより先に尋ねた私を見て…殿はふんっ…と鼻を鳴らして笑い。
「馬をここに…!
ここで…洗ってもらおう!!
馬に何かされても困るからな!!」
「畏まりました…。
では…仰せのままに馬を手入れさせて頂きます。」
床に手をつき深々と一礼をした後その場を去り馬を引き殿の目前で手綱を繋ぐと馬の体を撫でた。
尾張のおおうつけと噂を聞いていた事もあり…素行の悪さに驚きはしなかったものの…愛馬の毛並みについては…私が洗い流すまでもなく綺麗に整い大事にされている事の方が私には何より驚きだった。
「…いい子ね…。」
馬を優しく撫でると愛馬は気持ちよさそうに体を震わせた。