『武士ドルが斬る!?』〈前編〉
馬の足に泥はねした土を水で洗い落とした私を…殿は鋭い眼球で睨みすえて、片時も目を離さずにいる視線と目があい目を細めた殿の態度がなぜか可笑しくて馬の影に隠れて声を凝らして笑った。
「何が可笑しい…。
おかしい時は…わしの前で笑え…!」
「はい…。
畏まりました。
アハハハ…。」
笑っていいといわれて必死でこらえていたせいか声をあげて笑った。
「何が可笑しい!」
殿は私の笑い声に驚き声をあげた。
「いえ…。
笑うなら殿の前にと申されましたので笑ったまででございます。」
殿は私の言葉に意表をつかれて口ごもった。
「よい馬でございますね…。
よく手入れが施されているみたいだし…私が手をいれるとこなどないみたいですわ…。」
馬の毛並みを撫でながら整えると気持ちよさそうに馬も声をあげた。
「先程…なぜ笑った?」
子供みたいに口を尖らせて笑った理由を聞いた殿を見て私は微笑んだ。
「私をずっと厳しい表情で監視なさっているのに…急に目を細めたりなさるからなんだかおかしくて…つい笑ってしまいました。」