『武士ドルが斬る!?』〈前編〉
「これ!
吉乃!
殿に大して無礼であろう!」
兄上が真っ青になり私を叱りつけた。
「まあ…よい!
吉乃…。
今後…その馬の世話と湯漬けはそなたの役目だ。」
「私が…ですか?」
今度は…私が驚き声をあげた。
「そう…!
ただし…まだわしは吉乃を信用した訳ではないからな!
わしの目の前で馬を手入れすることとする!?」
殿は得意毛に鼻で笑い私を指差した。
「畏まりました…。」
そう…。
この日以降…殿は私に馬を預けては…手入れをさせているのをひたすら監視するようになられました。
尾張のおおうつけと称されていた殿でしたが…本当の殿はおおうつけではなく非常に用心深い事を悟りまた‥疑り深い面が物事をねじまがった見方をするのだという事を知るようになりました。
殿の中に誰にも打ち明ける事のない孤独を私はいつの日からか自分自身の傷と感じるようになったある日の事…。