『武士ドルが斬る!?』〈前編〉
いつものように今日も殿は…お変わりなく湯漬けを催促なされ縁側で私が馬を手入れするのをひたすら監視なされておりました。
「殿…?」
監視するその目がいつになく生気が感じられないように感じた私は声をかけた。
「吉乃…。
お前は…わしが怖くないのか?」
殿に敵意なく真剣に見つめられたのに胸の奥が高ぶり鼓動を激しく打ち鳴らした。
「怖い…?
なぜそのような事を?」
「…いつもわしの馬に尽くしてくれる。
粗暴で手の打ちようがない尾張のおおうつけと聞いておるのだろう…。
実母ですらわしにいつ殺されるかと怯えておるというのに…。
お主は…いつ殺されるやも知らぬというのにいつも笑っておる。
不思議に思うてな…。」
殿の言葉にふふ…と含んだ笑い声とともに微笑を浮かべた…。
「怖くは…ありませんわ…。
この馬だって信長様を怖いとは思っておりません。
確かに殿に会うまでは…吉乃もおおうつけという印象はもっていましたが…殿の馬をみれば…殿がうつけではないことがよくわかります。」