『武士ドルが斬る!?』〈前編〉
私の言葉に殿は縁側の端にある戸口の桟へと身をよせ地面へと飛び降り裸足のまま私に近付き私を鋭い瞳で見据えたその瞳の奥に射抜かれた。
「わかったような口を聞くな…。」
前方に立ちはだかったその長身は…まだ15だというのに見上げる程の身の丈で私を睨んだ。
「…お気に触ったのなら謝ります…。
ただ…よう頑張られました…。
この場所では…どうか殿のお心のままに振る舞いなされ…。
うつけは…殿の事をうつけという者達でございます。
この馬とて殿を慕っておりまする。
この馬が殿を慕っているのは…殿がこの馬を大事にしているからという事でしょう。
ですから…殿はうつけではなくうつけの面を被り嫌われ者をよそう演者にございます。
生駒の屋敷は…殿が表の舞台に立つ為の幕袖とお考え下さりませ。
演者は…舞台上では素顔を見せぬものでございます。
それ故に…幕袖に戻った時は…緊張感から解放され一息つかれます。
この生駒の屋敷を幕袖としてお考え下さり一息つかれる場所としてお使い下さいませ…。」