『武士ドルが斬る!?』〈前編〉
深々とお辞儀をして顔をあげ私を真っ直ぐに見下ろす殿の瞳の奥を見据えた私を、いきなり抱き寄せたまま唇と唇が重ねあう寸前で動きをとめた。
「!?」
お互いの息が触れ合うほどの口づけ寸止めの距離でなぜだかピクリとも動かず至近距離で見つめられた。
「この先…どうする?」
小声で呟やかれた言葉に不思議顔で首を傾けた拍子に…透かさず唇を押し付けられた。
そしてそのまま力強く抱きしめられ強引に唇を押し当てられた時…先程呟いた言葉の意味を悟った。
殿の首に腕をまわそうとした時…殿は体をビクリと震わせたのを感じ伸ばした手を頬にあてた…。
私の動きに合わせて強引に抱きしめた腕を緩めてとき、私の頬に手をあて押し当てていた唇をゆっくり離し見つめあった。
許されない人だとは…充分すぎるほどわかっていたけど、今…目の前にいるこのお方の為に私ができる精一杯の事をしたいと湧き上がる気持ちに理性が負けた。
私は背伸びをして殿の上唇に軽く口づけると、殿も同じように軽く口づけを返した。
やがて互いの唇をなぞるように深い口づけを交わした私達の体を、夕刻の紅い陽が熱く照らし私達の心を結びつけていくように暖かく包んだ。