ふるさとの抵抗~紅い菊の伝説4~
第四章
裏切り
キメラは戸惑っていた。
体を二つに分けて、人間の雄と雌を襲ったのだが、途中で飛んだ邪魔が入ってしまったからだった。
それらは素早く、そして強かった。
力そのものはキメラの方が勝っているはずなのだが、何しろ相手にはスピードという力があった。
その力のためにキメラはそれらを捉えることが出来なかった…。
義男は何が起こったのか、最初はわからなかった。
執拗に頭上から攻撃してくる化け物が不意にその手を緩めたからだった。
体制を立て直し、頭上を仰ぎ見ると未だにその化け物の姿はあった。しかし、今ではそれに向かってゆく白い影が見て取れた。その白い影は鳥だった。それは化け物が義男にしたように、執拗にそれに刃向かっていた。どうやら化け物の目を狙っているようだった。
そしてこのことは、義男にとっての好機でもあった。
義男は佐枝のいる方に目を向ける。
そこにも異なった形の化け物がいたが、それに対しては黒い影が襲いかかっていた。
義男は叫んだ。
「今だ、逃げよう!」
義男は佐枝の手をつかんで走り出した。
そのとき、九朗の嘴(くちばし)が空を飛ぶ獣の左目を貫いた。
九朗と魔鈴は疲労という内なる敵と闘っていた。
それぞれが相手をしている獣は底知れない体力を持っているらしく、一向に攻撃の手を休めようとはしなかった。
空を行く獣の左目をつぶした九朗は一気に上昇し、翼を畳んで今度は右の目を目指して急降下をした。
だが、その動きは相手の獣に読まれていた。
紙一重のところで九朗の攻撃をかわした獣は、その頑丈な翼で九朗を地面にたたき落とした。
九朗から意識が途絶えた。
キメラⅠは悠然と地上に降りてきた。もはやそこに人間の姿はなかったが、彼らには新たな目的が芽生えていた。
自分たちに刃向かってきたこの小さな存在を完膚無きまでに叩きのめす。それが今の彼らの目的だった。
白い生き物はいま、叩き落とした。次は黒い奴だ。
そいつも、その武器であるスピードがかなり落ちてきている。
そう長くは持たないだろう。
キメラⅠとキメラⅡはゆっくりとその間合いを狭めていった。
魔鈴が背中の体毛を逆立てて、威嚇の声を上げた。
だが、その声は弱々しい。
もはやこれまでか、魔鈴は観念して体中の力を抜いた。
キメラⅠとキメラⅡは再び一つとなり魔鈴に近づいていく。
背中から生えた職種が一斉に鎌首をあげこの小さな生き物に狙いを定める。
キメラは間合いを詰めていく。
そのとき、どこからか強い念の塊が放たれ、キメラの身体をとらえた。
キメラの身体はそれを受けて数メートル吹き飛ばされた。
倒れたキメラの鋭い視線が念が放たれた方向をにらみつける。
そこには一人の少女の姿があった…。
体を二つに分けて、人間の雄と雌を襲ったのだが、途中で飛んだ邪魔が入ってしまったからだった。
それらは素早く、そして強かった。
力そのものはキメラの方が勝っているはずなのだが、何しろ相手にはスピードという力があった。
その力のためにキメラはそれらを捉えることが出来なかった…。
義男は何が起こったのか、最初はわからなかった。
執拗に頭上から攻撃してくる化け物が不意にその手を緩めたからだった。
体制を立て直し、頭上を仰ぎ見ると未だにその化け物の姿はあった。しかし、今ではそれに向かってゆく白い影が見て取れた。その白い影は鳥だった。それは化け物が義男にしたように、執拗にそれに刃向かっていた。どうやら化け物の目を狙っているようだった。
そしてこのことは、義男にとっての好機でもあった。
義男は佐枝のいる方に目を向ける。
そこにも異なった形の化け物がいたが、それに対しては黒い影が襲いかかっていた。
義男は叫んだ。
「今だ、逃げよう!」
義男は佐枝の手をつかんで走り出した。
そのとき、九朗の嘴(くちばし)が空を飛ぶ獣の左目を貫いた。
九朗と魔鈴は疲労という内なる敵と闘っていた。
それぞれが相手をしている獣は底知れない体力を持っているらしく、一向に攻撃の手を休めようとはしなかった。
空を行く獣の左目をつぶした九朗は一気に上昇し、翼を畳んで今度は右の目を目指して急降下をした。
だが、その動きは相手の獣に読まれていた。
紙一重のところで九朗の攻撃をかわした獣は、その頑丈な翼で九朗を地面にたたき落とした。
九朗から意識が途絶えた。
キメラⅠは悠然と地上に降りてきた。もはやそこに人間の姿はなかったが、彼らには新たな目的が芽生えていた。
自分たちに刃向かってきたこの小さな存在を完膚無きまでに叩きのめす。それが今の彼らの目的だった。
白い生き物はいま、叩き落とした。次は黒い奴だ。
そいつも、その武器であるスピードがかなり落ちてきている。
そう長くは持たないだろう。
キメラⅠとキメラⅡはゆっくりとその間合いを狭めていった。
魔鈴が背中の体毛を逆立てて、威嚇の声を上げた。
だが、その声は弱々しい。
もはやこれまでか、魔鈴は観念して体中の力を抜いた。
キメラⅠとキメラⅡは再び一つとなり魔鈴に近づいていく。
背中から生えた職種が一斉に鎌首をあげこの小さな生き物に狙いを定める。
キメラは間合いを詰めていく。
そのとき、どこからか強い念の塊が放たれ、キメラの身体をとらえた。
キメラの身体はそれを受けて数メートル吹き飛ばされた。
倒れたキメラの鋭い視線が念が放たれた方向をにらみつける。
そこには一人の少女の姿があった…。