ふるさとの抵抗~紅い菊の伝説4~
九朗は赤い光点が流れていった方向に向かって飛んでいた。先の闘いにおいて傷ついた体を激しい痛みが走り抜ける。純白の体には所々血の滲んだあとが点在している。羽ばたく度に傷ついた翼が悲鳴を上げる。
いつもなら五月蠅いくらいに飛び回る雀や烏の群れが今日は全く見えない。恐らく今起こっている異変を感じて身を隠しているのだろう。九朗はそう直感していた。
下方には同じ『紅い菊』の使い魔、魔鈴の気配を感じることが出来る。それは猫にしか通れない道を苦労と同じ方向に向かっているのがわかる。それは自分が感じている邪悪な気配を感じているのだろう。九朗はそう思った。
景色はやがて住宅街から赤茶けた地肌を晒している工事現場に変わっていった。そこはあの吉行という人間と出会った場所であることを九朗は思い返していた。
そこに光点が集まっている。
そして別の存在がその集合体と同化している。
九朗は今自分が見ているイメージを『紅い菊』の主の脳裏に送り込んだ。
そこには先ほどより巨大化したキメラが居た。そしてその周囲を『狩人』達が取り囲んでいる。どうやら彼らはこの巨大なキメラと一戦を交えるつもりらしい。そのために上空を旋回している九朗には気づかないようであった。
キメラは体中にある口から炎の塊を放って工事現場の人間やその設備、そして『狩人』達を次々と餌食にしていた。その攻撃に為す術もなく人間達は逃げ惑っている。九朗はその中に彼の吉行という人間が居るのを感じ取っていた。
普段の九朗ならば人間のことなど気にもとめなかった。たとえ彼らが危機に瀕していても、それに構うことなく上空を通過していたことだろう。だが、今の九朗はこの吉行という人間のことがどうにも気になっていた。何故だかはわからなかったが、この人間とは心が通じ合うところがあったのだ。
九朗は吉行の行動がわかるように高度を少し下げていった。
その高度では『狩人』達の銃弾が飛び交っていた。それらはキメラに向けて放たれていたが、ことごとくその触手によって叩き落とされていった。明らかにキメラの触手は強くなっていた。この強度では『紅い菊』の爪でも傷つけることは難しいだろう。九朗はそう思った。
そのとき、キメラの放った火球が九朗の脇を掠めた。高度を下げすぎたためにキメラに気づかれたのだ。九朗は急旋回してその火球を避ける。しかし、傷ついた翼はそのGから更に強い悲鳴を上げた。
今の状態ではキメラと渡り合うことは難しい、九朗はそう判断して高度を上げ始めた。しかし、キメラの火球はそれを許さなかった。
次々と繰り出されるキメラのそれは、九朗の羽毛を徐々に焼き始めた。
やはり闘わなければならないのか、九朗はそう思い急激に高度を下げた。しかし、そうすることによってキメラからの攻撃は激しくなり、同時に『狩人』の銃弾を受けるというリスクも発生した。九朗は細心の注意を払って火球と銃弾の中を交わし続けながら、キメラの隙を狙った。
そんな中、キメラの注意がある一点に注がれていることに九朗は気づいた。その方向に注意を向けると、そこには吉行の姿があった。 九朗はほぼ直感的に雨のように降り注ぐ火球と銃弾の狭間を縫うように飛ぶとキメラの眼に狙いを定め、翼をたたんで矢のように突進した。
だが、キメラはそれを待っていた。
突き進んでくる九朗に対して触手の一部を割いて四方から刃を立てた。
九朗の真っ白な体が見る間に赤く染まっていく。
そして九朗の意識は遠のいていった。
いつもなら五月蠅いくらいに飛び回る雀や烏の群れが今日は全く見えない。恐らく今起こっている異変を感じて身を隠しているのだろう。九朗はそう直感していた。
下方には同じ『紅い菊』の使い魔、魔鈴の気配を感じることが出来る。それは猫にしか通れない道を苦労と同じ方向に向かっているのがわかる。それは自分が感じている邪悪な気配を感じているのだろう。九朗はそう思った。
景色はやがて住宅街から赤茶けた地肌を晒している工事現場に変わっていった。そこはあの吉行という人間と出会った場所であることを九朗は思い返していた。
そこに光点が集まっている。
そして別の存在がその集合体と同化している。
九朗は今自分が見ているイメージを『紅い菊』の主の脳裏に送り込んだ。
そこには先ほどより巨大化したキメラが居た。そしてその周囲を『狩人』達が取り囲んでいる。どうやら彼らはこの巨大なキメラと一戦を交えるつもりらしい。そのために上空を旋回している九朗には気づかないようであった。
キメラは体中にある口から炎の塊を放って工事現場の人間やその設備、そして『狩人』達を次々と餌食にしていた。その攻撃に為す術もなく人間達は逃げ惑っている。九朗はその中に彼の吉行という人間が居るのを感じ取っていた。
普段の九朗ならば人間のことなど気にもとめなかった。たとえ彼らが危機に瀕していても、それに構うことなく上空を通過していたことだろう。だが、今の九朗はこの吉行という人間のことがどうにも気になっていた。何故だかはわからなかったが、この人間とは心が通じ合うところがあったのだ。
九朗は吉行の行動がわかるように高度を少し下げていった。
その高度では『狩人』達の銃弾が飛び交っていた。それらはキメラに向けて放たれていたが、ことごとくその触手によって叩き落とされていった。明らかにキメラの触手は強くなっていた。この強度では『紅い菊』の爪でも傷つけることは難しいだろう。九朗はそう思った。
そのとき、キメラの放った火球が九朗の脇を掠めた。高度を下げすぎたためにキメラに気づかれたのだ。九朗は急旋回してその火球を避ける。しかし、傷ついた翼はそのGから更に強い悲鳴を上げた。
今の状態ではキメラと渡り合うことは難しい、九朗はそう判断して高度を上げ始めた。しかし、キメラの火球はそれを許さなかった。
次々と繰り出されるキメラのそれは、九朗の羽毛を徐々に焼き始めた。
やはり闘わなければならないのか、九朗はそう思い急激に高度を下げた。しかし、そうすることによってキメラからの攻撃は激しくなり、同時に『狩人』の銃弾を受けるというリスクも発生した。九朗は細心の注意を払って火球と銃弾の中を交わし続けながら、キメラの隙を狙った。
そんな中、キメラの注意がある一点に注がれていることに九朗は気づいた。その方向に注意を向けると、そこには吉行の姿があった。 九朗はほぼ直感的に雨のように降り注ぐ火球と銃弾の狭間を縫うように飛ぶとキメラの眼に狙いを定め、翼をたたんで矢のように突進した。
だが、キメラはそれを待っていた。
突き進んでくる九朗に対して触手の一部を割いて四方から刃を立てた。
九朗の真っ白な体が見る間に赤く染まっていく。
そして九朗の意識は遠のいていった。