BRACK☆JACK~本章~


「最近の君は少し、感情が入りすぎているんじゃないのか? …いくら長老が君の血の繋がった祖父だからって、いつもの君らしくない…私は、冷徹な君の実力を見込 んで、この組織の頂点に立った今でも、君をその座につけているんだよ…飲むかい?」


 ロンは、グラスにワインを注ぐ。


「…確かに」


 ユイは、にやりと笑った。

 そして、注がれたワインを 一気に飲み干す。


「ロン、これだけは覚えておいて。この組織の中には、まだまだ長老派がたくさん残っているっていうことを」

「あぁ、わかっているよ」


 グラスをテーブルの上に置き、部屋を去るユイの後ろ姿に、ロンは声をかける。


「そう言えば、あの男…そろそろ、消す準備をしておいたほうがいいな。しかし、まだ大事な切り札だから大事に扱ってくれよ?」

「………」


 ユイは、黙って部屋を出て行く。

 ロンは、部下を呼んだ。


「あの女が次にどんな行動を起こすか…見張っていろ」


 部下は一礼をして部屋を出て行く。

 ロンはそれを見送って、ユイの飲んだグラスを持ちあげた。


「…時代は、変わるんだよ。これからな」


 ぎゅっと握り締めると、ワイングラスは粉々に砕け散った。
< 63 / 108 >

この作品をシェア

pagetop