BRACK☆JACK~本章~
「最近の君は少し、感情が入りすぎているんじゃないのか? …いくら長老が君の血の繋がった祖父だからって、いつもの君らしくない…私は、冷徹な君の実力を見込 んで、この組織の頂点に立った今でも、君をその座につけているんだよ…飲むかい?」
ロンは、グラスにワインを注ぐ。
「…確かに」
ユイは、にやりと笑った。
そして、注がれたワインを 一気に飲み干す。
「ロン、これだけは覚えておいて。この組織の中には、まだまだ長老派がたくさん残っているっていうことを」
「あぁ、わかっているよ」
グラスをテーブルの上に置き、部屋を去るユイの後ろ姿に、ロンは声をかける。
「そう言えば、あの男…そろそろ、消す準備をしておいたほうがいいな。しかし、まだ大事な切り札だから大事に扱ってくれよ?」
「………」
ユイは、黙って部屋を出て行く。
ロンは、部下を呼んだ。
「あの女が次にどんな行動を起こすか…見張っていろ」
部下は一礼をして部屋を出て行く。
ロンはそれを見送って、ユイの飲んだグラスを持ちあげた。
「…時代は、変わるんだよ。これからな」
ぎゅっと握り締めると、ワイングラスは粉々に砕け散った。