BRACK☆JACK~本章~


「あぁ、ごめんなさい」


 無理に笑って、ユイはその男――エイジを見る。

 エイジを連れて来た部下には、下がるように言って。


「…何か、あったんですか?」


 よそよそしい、他人行儀な口調。


「…エイジ…」


 椅子から立ち上がり、ユイは言った。


「今すぐ、ここから逃げて」

「…はい?」


 いきなりの指示に、エイジは戸惑う。


「今のあなたは、本当のあなたじゃないの…もうそろそろ限界よ…。私の力じゃ…どうにもならない」


 今はこの組織『ホン・チャンヤー』のナンバー2に君臨しているユイ。

 だが今回の事で、ユイは自分の力のなさを、改めて思い知らされた。

 切なそうなユイの表情を見てから、エイジはソファに座って煙草を取り出す。

 火を点けて、一息、煙を吐き出して。
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