BRACK☆JACK~本章~
【7】
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「ちょっと、組織の本拠地ってあのカジノのビルじゃなかったの?」
車の助手席で、ミサトは言った。
レンの運転する車は 、一向にダウンタウンを出る気配はない。
「言っただろ、あっちはウソの世界だってよ」
「わっけわかんない」
車は、ダウンタウンの中心で止まる。
「?」
何の変哲もない町並みに、ミサトは首をかしげた。
「ここが組織の本当の本拠地だ。表のあれは、ダミーでしかねェ」
「だって、普通の町じゃない、ここ」
「この町全体が、組織のテリトリーなんだよ」
へぇ…とミサトは頷く。
目の前のこの光景全部が『ホン・チャンヤー』の本拠地だというのか。
確かに、ビジネス街に近い側のダウンタウンよりも雑然とはしていない。
よく見ると、名物のようになっている道端でたむろしている怪しげな連中もいなかった。
かといって、ここが本拠地だという割りには柵とか壁とかで仕切られている訳でもなく。
だが、暗黙の了解で、ダウンタウンに住んでいる人達すら、ここには近寄れないのか。
ミサトは改めて、この『ホン・チャンヤー』という組織の力の大きさを知った。