BRACK☆JACK~本章~
 物陰に隠れてシャツの裾を引きちぎり、ミサトは左腕にきつくそれを巻きつけた。

 埃まみれになった額を、手の甲で無造作にぬぐい、新しい弾奏を装着する。

 この建物は階数は5階とそんなに高くはないが、敷地面積がやたらと広い。

 カタカナのコの字型になっていて、中庭はヨーロッパ風の豪華な庭園になっていた。

 だがそれをゆっくりと眺めている暇はない。

 ビルの中はすでにあちこち爆破されていて、壁は壊され、窓ガラスは粉々に割れている。

 ここら辺には人の気配はないが、そのかわり、廊下には血まみれで倒れている人間がたくさんいた。


「やっぱ…これもユイの仕業なの…?」


 ミサトは小声で呟き、いつでも銃を撃てる体制のまま進んでいく。

 この場合、取り敢えず上を目指すのが筋というものだろう。

 だが階段が見当たらない。

 今登ってきた階段は三階までしか続いてなかった。

 もし、ユイがこの状況を作ったのだとしたら。

 ユイはこの組織のボス、ロンと対決するつもりなのか。


『早すぎるんだよ!』


 レンの言葉。

 もう少し待っていれば、自分が、手助けしてやれるのに。
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