ふたり輝くとき
「逃げるのは許さないって言ったよね!?」

ユベールはサラの涙を拭う。けれど、それはダミアンから奪い返したときのように止まることはない。

「君は、僕のことを好きになったはずだよ。そうじゃなきゃ、このブレスレットだって外す。キスだって、本気で抵抗したことはなかった!」

わからない。

どうして、ユベールはこんなにも焦っているのだろう。

サラが自分を好きだという理由を探している。その理由だって、筋が通っているかもわからないくらいに心が揺れている。

キスなんて、最初の苺味以外のそれらはユベールが無理矢理するもので、サラの抵抗など許さないのはユベールの方で。

「帰りたい!好きじゃない!」
「――っ!どうして!?それならどうして僕を呼んだの?」

パン――と、サラの部屋のシャンデリアが割れて床に散らばった。2人の気が同時に漏れたようで破片は大きなものと小さいものとが混ざっている。

ユベールは立ち上がって深く息を吸い込んだ。

(僕は、何をやってる?)

冷静になるべきだ。サラも、力を放出してしまったことで我に返ったようだった。

「あんまり……城をうろちょろしないでよ。迷惑だから」

なんとかそれだけ言うと、ユベールは部屋を出た。
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