ふたり輝くとき
「恥ずかしがってるんだよ。僕の前でだって、恥じらってなかなか声も出さないし。でも、そういうところが奥ゆかしくてそそられるんだ」

ニッコリと笑って見せると、アドリーヌの頬が引きつったように見えた。

ユベールはそれが面白くて思わずクスッと笑う。

「ユベール?」
「いや、ごめん。昨日の夜も可愛かったなって思い出しちゃって」

アドリーヌの手が、膝の上で震えている。当然だ。彼女はユベールが積極的な女――自分のような女――を好むと思っている。そして、ユベールの前では必ずそう演じていた。

「ユベール様!あんな小娘のどこがよろしいのですか!?」

暗にアドリーヌとは正反対の女がいいと言っていることが屈辱だったのか、アドリーヌが声を荒げる。

「私のこと、気に入ってくださっていたではないですか!私、ずっと貴方のこと――」
「誰が誰を気に入ってるの?」

ユベールは“女”用の笑顔を貼り付けてアドリーヌに問いかけた。アンナにユベールとの肉体関係をどのように教えているのかは知らないが、勘違いもここまでくると笑うしかない。

「アドリーヌ、落ち着いて。ユベール、貴方もおふざけが過ぎますよ。いつもアドリーヌと夜を過ごしていたでしょう?」

アンナがアドリーヌの背中を擦りながら、ユベールを諭すような声を出す。

「ふざけてるのは彼女の方でしょ。僕、1度もアドリーヌを抱いたことないけど?」
「――っ!?」
「まぁ……それは、本当なの?」

アドリーヌの顔が真っ赤に染まっていく。アンナは「あらあら」と頬に手を当てているが、そこまで驚いている様子でもない。

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