ふたり輝くとき
ユベールは大げさにため息をついて立ち上がった。

これ以上、付き合っていられない。

こんな醜い女たちの顔を見るより、可愛いサラに――

(……何を、考えてる?)

ユベールはハッとして首を振った。なぜ、ここでサラが出てくるのだ?先ほどどうやって従順な人形に育てようかと考えていたせいだろうか。

「とにかく、側室はいらないよ」

どうせ、側室がいたところで……“終焉”はユベールの手によってもたらされる。

「ユベール、それはダメよ。子供は多い方がいいわ。ね?サラに産ませるにしたって限界があるでしょう。お相手の侍女の中に――」
「いらないってば!」

ユベールは少し大きな声を出し、気を放出しそうになるのをグッと奥歯を噛んで抑えた。

そんな、道具としての子供など何人いても同じ。生き長らえたとしても、アンナに使われるなら死んでいるも同然だ。自分の意思など持てない。

ユベールも、サラも、愛とは程遠いところで生み育てられた。

ただ、サラは……少しばかり幸運だっただけだ。偽りの光に覆われた城よりも、愛の光に満ちた祖父母のもとで暮らすことができたのだから。

「もう行くから」

それだけ言って、ユベールは部屋を出た。長い廊下を脇目もふらずに進み、角を曲がったところで壁に背を預ける。見上げた天井には、キラキラと輝くステンドグラス。その輝きが、彼女のそれと重なって。

(サラ――)

心の中でその名を呼んだことに気づかないまま、ユベールはしばらくそこで立ち尽くした。
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