ふたり輝くとき
「好きじゃない!私を愛してくれない人なんて、好きにならない!愛したりしない!」

サラが金切り声で叫んで、ユベールの横をすり抜けていく。

(なんで……)

ユベールは振り返ってサラに手を伸ばした。けれど、それを敏感に感じ取ったサラが叫ぶ。

「触らないでっ!!」

ガシャン、パン、ガンッ――

派手な音が続いて、部屋の窓もシャンデリアも棚のガラスも……すべてが割れた。

「サ、ラ……?」

今のはユベールじゃない。けれどサラはパラリージを飲まされている。呪文を使うことはできないはずだ。たとえ、無意識のものだとしても。

それなのに、サラの身体が光り輝いていて気が漏れ出しているのがわかる。目に見えるまで気が放出されているということは、尋常な量ではない。

肩で息をしているサラの額には蓮華の模様が浮き出ていて……

「――っ!サラ、ダメだ。それ以上――」

ユベールの制止も聞かぬまま、サラはパッと姿を消した。

「もう!」

ユベールは舌打ちをして部屋を飛び出した。

< 110 / 273 >

この作品をシェア

pagetop