ふたり輝くとき
――サラは中庭に移動してきていた。

身体が熱くて、特に胃の辺りは焼けるように痛い。そして、額から漏れ続ける自分の気も止められなくなってしまってどんどん体温が上がる感じがする。

サラは右手で胃を押さえ、左手で額を押さえた。

それで痛みが消えるわけでも、気を止められるわけでもないのだけれど。

「ぅっ、く……」

加えて涙まで流れ始めて、サラは膝をついた。

やはりユベールは、サラを“人形”として必要としているのだ。それは、ジャンやアンナが、それにおそらくロランも……サラを道具として必要としているのと同義。

帰りたい。今すぐ、誰もサラを“所有”しようとしない心穏やかに過ごせる場所に。

そう思えば思うほど、身体から流れ出る気は止まらなくなってしまう。

(落ち着いて……)

興奮してはいけない。落ち着いて、心を静めなければ気をコントロールすることができない。それなのに、身体は言うことを聞かなくて。

「サラ!」

優しい声に視線を上げるとロランが息を切らせて立っていた。ロランはすぐにサラのそばに膝をついて、背中をさすってくれる。

「大丈夫?ゆっくり、息をしてごらん」

言われた通りに、呼吸を整えようとするけれどなかなかうまくいかない。漏れている気が多過ぎて、サラの心拍数を上げている。

「サラ、俺が――」
「ロラン!サラから離れなさい!」

ロランがサラの額に触れようとしたとき、女性の金切り声がそれを遮るように響いた。
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