ふたり輝くとき

迷い

「痛い!もっと丁寧に手当てできないの!?」

ユベールは自分の腕に呪文でトラッタメント――治療――を施しているクラドールに悪態をついた。

「ユベール様、お静かに。サラ様のお身体に障ります」

ユベールに怒られて真っ青になったクラドールとは対照的に、クロヴィスは振り向きもしないままに言った。

「うるさいな、こいつが下手だからいけないんだよ」

イライラと吐き捨てるように言ったけれど、クロヴィスはちらっとユベールに視線をやっただけで、すぐにサラの眠るベッドに視線を戻してしまった。

「それで、サラ様の状態は?」

クロヴィスがサラの診察をしているクラドールに問いかける。

「かなりの力を放出されたようですね。サラ様ご自身のお身体が耐え切れないほどとは……2・3日は目を覚まさないかと思います」

腕のトラッタメントがまた沁みて、ユベールは顔を歪めた。

「そう、ですか。それと、吐血されたらしいのですが……?」
「過度のストレスによる胃炎です。力の暴走とは関係ないでしょう。ただ、吐血までされたとなると、かなりひどい状態ですので……」

クロヴィスが聞こえよがしにため息をついたのが聞こえたが、ユベールはそれを無視した。

どうせ、ユベールのせいだとでも言いたいのだ。

「そんなの、サラが弱かったってだけでしょ」

ユベールの呟きは、自分でも驚くほどに小さく空気に溶けていった。
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