ふたり輝くとき
クラドールがユベールとサラにすべてのトラッタメントを施して出て行った後。

「ユベール様が密閉の呪文を使ったのは、初めてでございますね?」
「だから、何?あのままサラの力が爆発してたら城ごと吹っ飛んだと思うよ。現に中庭は焦げちゃってたし」

クロヴィスの指摘に、ユベールはフンと鼻を鳴らす。

ムカつくけれど、クロヴィスの言う通りだ。防御の呪文など使ったことはなかった。使ったこともない、必要ないと思っていた呪文を唱えたのはどうしてだったのだろう。

それにユベールは、城が潰れようが、ここの人間が全員死のうが……

「それを……望んでいらっしゃったのではないのですか?」

心の中を見透かすようなクロヴィスに、ユベールは舌打ちをした。

「別に。僕はすべての終わりを自分の目で見たいだけだ。母上とロランだけじゃ足りないんだよ。父上も大臣たちも全員が死に絶えるところを見るのが僕のラストシーンだ」

そう、この国が文字通り滅びる瞬間を見ること――それがユベールの望みだ。

王位継承の儀を執り行う日を決行日に定めている理由は簡単。その儀式には国王から臣下まですべての人間が1つの部屋に集まるからだ。

王位を継承するのは誰でもいい。城に影を落とす欲がすべて集まるだけでいいのだ。どうせ、そこですべてが終わるのだから。

「そうでしょうか?私には、貴方に迷いが出てきたように見えます」
「どういう意味?」

そんなものはない。ずっと、待ち望んでいた日がようやく手の届く場所まで来ているのだから楽しみに決まっている。

「すべてを壊すということは、サラ様も壊れるという意味です」
「そんなこと、わかってるよ」

そう、言ったけれど……ユベールの心はスッキリしないまま。 
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