ふたり輝くとき
「君にはルミエール第18代女王サラの、僕には第14代国王ユベールの遺伝子が植え付けられてる」

サラは何も言わなかった。呆然とユベールを青い瞳に映している。

「サラは僕たちが呪文を使える仕組みを知ってる?」
「少し、なら……学校で習いました」

ユベールの問いに、サラはぎこちなく頷いた。あまりに現実離れした話に頭がついてきていないようだ。

「まぁ、正確には遺伝子とは少し違うけど……」

呪文を使える者は、心臓に似た役割を果たすセントロというスポットと、血管と同じような通り道であるトゥーボという器官を持ち、通常時から血液と同じように気が身体を流れている。

呪文を使う際は、その流れている気から必要な分だけを呪文に変換することで力を発揮するのだ。

「今、僕たちが“気”って呼んでる力は、古代ではチャクラって呼ばれてた。医療用語では今もそれが使われてる。で、簡単に言えば、僕らにはサラ女王、ユベール国王と同じチャクラが流れてるってこと」

サラは唇を震わせてユベールを見つめたまま動かない。

信じられなくても当然だろう。誰かと全く同じ気――チャクラ――を持つことのできる確率は限りなくゼロに近い。例えば血縁者同士で似ていることはあっても、力の強さや質、量などすべてがピッタリ一致することは難しい。

「もちろん、自然にじゃない。“植え付けられた”って言ったでしょ?僕らには人工的にチャクラが流し込まれた」

ユベールは生まれて間もなく、サラはシュゼットがダミアンの手に渡ってしまった直後に。

「変だと思わない?父上には側室が数え切れないほどいる。父上は憎らしいほどに健康体、それなのに王子はたったの3人」

そう言うと、サラがシーツをギュッと握り締めた。その手が目に見えて震えている。
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