ふたり輝くとき
「僕は最初から、生まれる前から道具として扱われてる。名前はただの“ラベル”だよ」

力の強い王子を自分に従順に育てて傀儡とする。そうすれば、政治はダミアンの思うままに動かし続けられる。力のある息子に逆らう者はいない。いたとしても、すぐに消すことができる。

そして、アンナを城に引き入れ、ユベールを産ませた。

アンナはアンナで、貧しかった生活から一転、贅沢三昧の日々――この城の欲――に堕ちていった。今は自ら権力を持とうと必死に醜態を晒している始末。

ダミアンとの夜のお遊びとやらも気に入ったらしく、ダミアンにベッタリだった。

「僕がそれを知ったのは、14歳のとき。父上は『お前に力を与えてやった』って言った」

ユベールはそのときのことを思い出して、グッと奥歯を噛みしめた。

「血が繋がってるから、力を与えたから父親なの?道具として僕を創って、扱って……僕はあいつらの欲を満たすためだけの存在なんだよ」

サラは、青い顔をしてユベールを見つめるだけ。言葉は出てこないようだった。

「君も同じだよ。ジャンは父上への復讐のために、君にサラの力を与えた。神が与えただって?笑わせる。僕たちは悪魔よりも質が悪い“父親”とやらに創り出された醜いコピーだ」

神がいるとするならば、どうしてユベールとサラの命を許しているのか……甚だ疑問だ。

誰も、ユベールを人間として見ていないだろう。古代に名を馳せた天才ユベールの分身として――最強の兵器としてしか見ていない。

サラも同じだ。18代女王はルミエールの歴史でたった1人の女君主。ユベールと同等の力を持っていたと言い伝えられている。

力がすべて。

その器は、誰であろうと、何であろうと関係ない。
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