ふたり輝くとき
「わ、たしは……私は、どうして生きているのですか?」
「君は……」

ユベールよりも残酷な真実を隠した身体を持つサラ。ユベールでさえ、それを知ったときには吐くかと思ったくらいだ。

「っ、教えて下さい!そんな確率の低い実験で、私はどうやって生き残ったのですか!?」

サラがユベールの肩を掴んで揺らす。

「君は1度、殺されてるから」
「ど、ういう、こと……です、か?」

サラが一層身体を震わせて問う。

「君は、本当は呪文を使えない人間だった」

稀にセントロとトゥーボを持たない人間が生まれることがある。突然変異とでもいうのだろうか、呪文を使うための器官だけすっぽりと抜け落ちた身体――もちろん呪文は使えないし、チャクラも持っていない。サラはそんな人間の1人だった。

「ジャンは君が呪文を使えないと知って、君を捨てたんだ」

復讐に使えないと分かった途端にいらなくなった娘。サラはルミエールの極秘研究機関へ、チャクラ研究をしているクラドールたちへの実験体として送られた。

「チャクラの力が弱くて呪文をあまり使えない者は少なくないけど、セントロとトゥーボすら持たない人間はこの世界に何人いるかってくらい」

ユベール国王とサラ女王のチャクラ移植研究をしていたクラドールたちも、サラの身体に興味を持ったようだった。

「その頃、ちょうどサラ女王のチャクラの器を探してたクラドールたちは思ったのさ……」

元々セントロやトゥーボを持つ者――すでに固有のチャクラを持つ者――への移植が難しいのなら、何も持たないものに入れたらどうなるのか、と。
< 128 / 273 >

この作品をシェア

pagetop