ふたり輝くとき
「悪知恵だけは働くってこういうことだと思わない?ジャンも、君が呪文を……それも並以上の力を持てるのならいいと思ったんでしょ」

成功すればラッキー。失敗しても元々使えなかったサラはいらない、と。

ユベールは乾いた笑いを漏らした。

「君の身体を散々いじった後、衰弱して死にそうだった君の身体をまたかき回して……サラ、君が生まれた」
「わ、たしは……全部が、作り物だってことですか?」

サラの右手は冷たく、氷のようだ。

「そうだよ。僕も直接見たわけじゃないけど、君の身体はボロボロだったと思う。それを、赤い瞳で再生……いや、それ以上を創り上げた。1度殺されたって言うのは、そういう意味」

当時ルミエールの所有していた赤い瞳の能力者は1人。細胞に直接手を加えることのできる彼にサラのセントロとトゥーボを古代の記録にある通りに作らせた。他の器官もできるだけ記録に忠実に細胞をいじったようだった。

だからサラのチャクラ移植は成功した。だが、どうやらサラの“改造”は中途半端に終わっているようだ。

「その赤い瞳の所有者も、まだ若かったらしいし……君を創り出して力を使い果たしたのか、体力や精神力が持たなかったのか、死んだってさ」

先日の力の暴走から推測しても、サラの身体は不完全なままなのだとユベールは思っている。もしくは、サラの診察をしたクラドールが言うように、本来チャクラを持たないはずのサラには刺激が強すぎて身体が耐えられていないか。

「それで、呪文を使えなかった君が一転、ルミエールで1・2位を争うほどの力の持ち主になった。当然、ジャンは“娘”を大事に育て始めた。それすら人任せだったけどね」

ジャンはサラのチャクラ移植成功を知ってすぐにサラを引き取って自分の両親に預けた。ダミアンから隠して育てるために。

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