ふたり輝くとき
「これが、汚い真実。ルミエールは欲と力に支配された国だよ。僕たちが生きているのは、力を持ってるから」

誰もがその力を使おうとするから。

「力を持ってなければ、すぐに捨てられる。ロランがいい例だ」

ロランが生まれたときは、チャクラ移植をできるクラドールがいなかった。それを手に入れたときにはロランの能力はすでに“個”として確立してしまっていた。

そこに他人のチャクラを流し込むとどうなるかはさすがにバカでもわかる。

ロランにとってそれは幸運だったのか、不運だったのか……移植をされたとしても待っていたのは死だ。けれど、力を持たないせいで見向きもされない彼もまた憐れな王子。

「でもね、力を持ってる僕も今じゃただの捨て駒だ。僕よりもお気に入りのジュストが生まれたから、僕は格下げ」

ダミアンがシュゼットを手に入れた時点で、それは決まっていたのだと思う。

いつまでも女の身体を欲するバカな父親は、今度は力の強さよりもお気に入りの女の面影を求めるようになった。シュゼットの残した唯一の存在、ジュストを王にしたくなったのだ。ダミアンの執着が尋常でないのは、おそらく彼女が命を絶ったから。

失ってしまうと惜しくなる――ないものねだり、というやつだ。

もちろんそんな理由だけではなく、ダミアンが権力を持ち続けるためにはジュストを王に据えるのが1番だということがあるけれど。

ユベールは別に国王という地位が欲しい訳ではない。

ただ、この偽りの歪んだ世界を壊したい。

「いい加減、うんざりなんだよ」

誰もがユベールを恐れて機嫌を伺っているくせに、ユベールの力を使いたくて仕方がない。それを簡単になせると勘違いしている奴らにも嫌気が差す。
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