ふたり輝くとき
誰も“ユベール”を見ていないくせに、父親や母親は権力というエサで釣ろうとし、女は“愛”とやらをチラつかせてみせる。

「僕が父上のクラドール探しに協力してた本当の理由は、僕の力を最大限まで増幅させる方法を見つけたかったから」

ダミアンはユベールが自分の支配下にあると都合よく考えていたようだけれど、それもユベールがサラを奪い返したときに間違いだったと気づいただろう。

「ま、父上は口止めとか言ってジュストに会わせたクラドールをすぐに殺しちゃうから研究もなかなか進まないし、君がいるならもう必要ないことだけど」

裏でクラドールに研究させていたのはユベールの呪文の効果を何倍も、何十倍も大きくする方法。

「みんなバカなんだよ。僕の輝きに騙される。光が強ければ強いほど、影が濃くなる……そんな簡単なことすら見えてない」

ユベールは耐え切れなくなって、身体の力を抜いた。自然と笑いがこみ上げてくる。声を出して笑い出したユベールを見て、サラの瞳に怯えが映ったけれどそんなことは気にならなかった。

「でも……これだけの力を与えてくれたことだけは感謝してもいい。ジャンも安易に君を僕のもとへ嫁がせちゃったみたいだけどさ、クラドールの研究がうまく進んでなかった僕にとってはラッキーとしか言い様がないよね」

震えるサラの頬に手を添えて、そっと撫でる。

サラ――ユベールの可愛いお人形。

「ねぇ、サラ。言ったよね?僕が壊したいのは、すべてだよ。この闇の城も、欲にまみれた人間も、この国の国民も……世界を巻き込んでも構わない」

何もかも、なくなってしまえばいい。この狂った舞台を破壊したら……清々する。

サラがいれば、サラとユベールの2人ならそれが簡単に成せる。

「ねぇ……すべてを知った今、君は…………誰の手をとる?」

そう言って触れたサラの唇は、とても冷たかった――
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