ふたり輝くとき
中庭に出たところで、ホッと息をつく。

ここから裏庭に出て、城壁――結界――の外側へと出れば、光移動の呪文が使える。ルミエールの城を覆う結界は、外から中、もしくは中から外への呪文での移動はできないように作られているのだ。

そのまま中庭の隅へと進んで行こうとすると、グッと腕を引かれて後ろから抱き締められた。

「サラ、君は病み上がりだろう。どこに行くつもりかな?」
「ロラン……様」

耳元で囁くような優しい声。サラはそっと顔を上げた。

「気が漏れてる。たぶんユベールもすぐに君を探しに来る」

サラの瞳に映った疑問を読み取ったのか、ロランはそう言うとフッと息を吐いてサラの身体を離した。

「ごめんね。君を、道具のようには扱わないって言ったのに……あんな風に奪い合うような真似をして」

ロランに身体を反転させられて、向かい合うようになる。ロランは困ったような顔をして、でも、サラと視線が合うと優しく微笑んでくれた。

「謝りたいと思っていたけど、君の部屋には出入り禁止にされてしまったからね。君が抜け出してくれて、俺にとっては幸運だったかな。でも、戻らないと――」
「戻りません」

ロランの言葉を遮って、サラはロランとの距離をとった。

「私に会ったこと……秘密にしてください。私、もうここにはいられません」
「そんなに気を散らしていたら、俺が黙っていたとしてもクロヴィスやユベール、他の呪文を使える人間も君がどこにいるかすぐにわかるよ」

サラは両手で自分の身体を包むようにした。

確かにここのところずっと気が漏れ続けている。力が暴走した後、トラッタメントを受けたはずなのに、なぜなのだろう。
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