ふたり輝くとき
「君が出て行く理由は、ユベール?」

サラはロランの問いに答えなかったけれど、ロランには答えがわかっているようだった。

「俺が、奪ってあげるって言わなかった?」

サラは首を横に振った。

「どうして?俺は、君を――」
「やめてください」

サラの心はすでにユベールに囚われてしまった。ロランが本当にサラを求めていても、サラはそれに応えることができない。それ以上に、今はロランの言葉もすべてが嘘のように感じられる。

「ロラン様っ!」
「好きだよ」

ロランに身体を引き寄せられて、サラは身を捩った。

「サラ、俺は君を殺したくない」

こげ茶色の瞳が、サラを近距離で映す。その瞳が閉じていくのと同時に、ロランの顔が近づいてきてサラは両手を思いきり突っ張るけれど力では敵わない。

「ロラ――」
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