ふたり輝くとき
「サラ、クリームついてるよ?」

そう言って、人差し指でそれを拭って自分の口へと運んだ。甘いはずのそれは、確かに甘いような、だけど苦いような……よくわからない味だった。

そのユベールの行動に、サラが真っ赤になる。羞恥から涙目になった彼女を見たら、なぜか楽しくなって……

ユベールはそっとサラの頬に手を添えて、唇を重ねた。

サラがピクッと身体を跳ねさせる。驚いて開きそうになった手を優しく握ってクレープが落ちるのを止めた。

唇をゆっくり離すと、サラは先ほどよりも更に赤くなってユベールを見つめていた。

「キス、初めてだった?」

聞くまでもないけれど。

「あ、の……」
「ふふっ、苺味……だね?」

甘い、甘いキスはサラの心に光を与えるだろう。その光の反対側にできる影はきっと濃いものになる。

「さ、クレープ食べたら帰ろっか」

ニッコリと笑ってサラから身体を離す。サラは戸惑いを隠せない様子で、けれどそれを隠すようにクレープに口をつけていた。

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