ふたり輝くとき
「で、でも貴方はっ――」

ユベールがサラの抗議を飲み込んで……そして、サラがユベールの背中に爪を立てた。

痛みは、罰。真っ白だったサラを、穢してしまう自分には軽すぎるものだけれど。

「黙って、って……言ったでしょ」

サラは大粒の涙を流しながら、身体を震わせている。

「ねぇ、サラ。僕のこと、好きだよね?」
「ユ、ベールさ、ま……っ」

サラの涙を親指で拭いながら問う。彼女の可愛らしい声も唇も、今は震えてしまっていて。

(もっと……)

もっと、泣かせたい。この、どうしようもなく小さくて弱い存在を。

自分の腕の中で、泣いて欲しい。

「ねぇ、好きでしょ?好きって言ってよ」

ただ一言、それだけを言って欲しい。ユベールを受け止めて欲しいだけなのに。

「ねぇ、サラ!僕のことが好きだって言って!」
「――っ」

けれど、サラがそれ以上意味のある言葉を紡ぐことはなかった。ユベールがそれを許さなかったから。
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