ふたり輝くとき

涙と笑顔

――興味は、最初から“特別”だったのかもしれない。

ユベールがサラとの縁談を知ったのは、サラが嫁いでくるよりもずっと、ずっと前。すぐにサラやその周辺を探れば、笑えるくらい黒い欲にまみれた話だった。

そんな娘がどれほど狡猾な狐かと見に行けば、優しい祖父母に大事に育てられた真っ白で純粋で光り輝く……うさぎだった。

その輝きがいつまで続くのか、どう陰っていくのか、興味があった。

でも。

ユベールは、サラの輝きが続くことを求めていた。

早々に影を濃くしてしまった自分とは違うサラが欲しくて、欲しくてたまらなかった。

“楽しませて欲しい”なんて言葉で誤魔化していたけれど、そばにいてほしかった。ユベールの影を照らして消してくれる彼女を、離したくなかった。

ロランの香りに簡単に染まってしまう無防備なサラを、誰にも触れられないところへ閉じ込めたい。

アンナやジャンの言葉に傷つくサラを抱き締めたい。

ダミアンの影に怯えて泣くサラを、ユベールの腕の中で泣かせたい。

サラ。

ユベールの、サラ。

ユベールだけのために……泣いて、怒って、笑って、“好き”って言って。

(僕は、君を愛してる……)
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