ふたり輝くとき
呪文で衝撃は軽くしたものの、防御の呪文に慣れていないせいで少し足が痺れた。けれど、それに構うことなくユベールは走った。無駄に広い庭がユベールを苛立たせる。

「サラ!」

裏庭に入って、大声でサラを呼ぶけれど姿は見えないし返事もない。出口は裏門のみ、そこには警備兵がいるはずだ。サラを通すとは思えない。

ならば、かなり高い塀を越えて行くしかない。

そんな体力がサラに残っていない……ことを期待する。ユベールはサラが気を失うまで離さなかったから、初めてだったサラには相当な負担だったはずだ。

「サラ!サラ!返事してよ!」

手入れすらされないような裏庭の隅、生い茂る草木を掻き分けていく。

やっと城を囲う塀が木々の間から覗き始めて……その高い塀の前にポツリと立つ小さな人影をユベールの瞳が捉えた。

破れたドレスと、ユベールのクローゼットから持ち出したのかサイズの合わない上着を羽織った華奢な身体。金色の長い髪はなびいて光っている。

「っ、サラ!」
「――っ」

ユベールの声に、パッと振り向いたサラは真っ赤に目を腫らしてユベールを見た。
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