ふたり輝くとき
けれどそれは一瞬で、ユベールを見たサラは顔をパッと逸らして塀を登り始めた。

「待って!サラ!」

ユベールは気を放出して絡みつく草や枝を飛ばした。急いで駆け寄って、サラの腰を掴む。

「いやっ!離してください!」
「嫌だよ!離さない!」

サラにはやはりまだパラリージの効果が残っているようで、気の流れが鈍いのが感じ取れた。

ユベールは思いきりサラの身体を引っ張った。

ドサッと尻餅をついたユベールの上に、サラが落ちてくる。その細い身体をギュッと抱き締めたら、柄にもなく涙が出そうになった。

「ごめん……僕が悪かったから。行かないで、サラ」

声が震えた。

サラを、失いたくない。

「ねぇ、サラ。返事、してよ……行かないで?」

答えないサラの身体を反転させて向かい合うとサラはまた泣いていた。それが、嬉しくて。

「ど、して、追いかけてきたのですか?」

涙を拭って、サラが掠れた声を出した。
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