ふたり輝くとき
「どこに行こっか?」

ユベールが涙のせいで頬に貼りついた髪をそっと払う。サラは呆然と、ユベールの今までにない優しい表情を見ていた。

何か、吹っ切れたような笑顔。

「ほ、んと……に?」
「うん。置いてかないでって言ったでしょ?君が行くなら、僕も行く」

これは、夢なのだろうか?

ユベールがサラを好きだと言って、一緒に逃げるとまで言っている。

自分はまだ、気だるいまどろみから覚めていないのかもしれない……

「夢じゃないよ、サラ」
「いっ――」

ユベールが笑って、サラの首筋に歯を立てた。チクリとした痛みに、瞳に溜まっていた涙が1つ零れた。

「痛かったでしょ?サラ……また、泣いてる。君はホントに可愛いね」
「……めちゃくちゃです」

サラが泣くと可愛いというユベールはいじわるで、でも穏やかな表情でサラを見つめてくれていた。

「めちゃくちゃでもいいよ。僕はひねくれてるし、これから覚悟してよ。……さ、行こ?サラの好きなところに」

立ち上がったユベールは、サラに手を差し出してくれた。

サラは涙を拭って、その手を取った――
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