ふたり輝くとき

ルミエールの城はいつになく騒がしく、廊下を屈強な兵士たちが埋め尽くすかのように歩いていた。

クロヴィスはその流れに逆らって靴を鳴らす。その度に痛みが走る鳩尾に手を当てて静かに呪文を唱えながら心の中で叫んだ。

(ユベール様!こんな事態、私では抑えきれませんよ!)

すると、大きなため息が頭に響いてきた。

『そんなに怒らないでよ。過ぎたことは仕方ないでしょ。でも、一刻も早く次の手を考えなきゃね』

そんな声を聞きながら、クロヴィスはようやく辿り着いたダミアンの私室の前で立ち止まった。本来、扉の前に常駐するはずの警備兵もいないし扉も開いたままだ。

そして中から聴こえてくるダミアンの怒声と侍女の悲鳴やうめき声。

『あーあ。これじゃあ話どころじゃないかもね』

呆れたように響いた声。クロヴィスは息を思いきり吸い込んだ。

「ダミアン様!入りますよ!」

聞こえているのかは定かではないが、クロヴィスは一応そう断りを入れて奥へと進んでいった。

< 151 / 273 >

この作品をシェア

pagetop