ふたり輝くとき
サラが部屋を抜け出したことにはすぐに気がついた。

クラドールにトラッタメントを施させたものの、サラの気はあの日から少量ではあるが漏れ続けていたから感知するのは容易い。

クロヴィスと同じようにロランやユベールもサラの行動に気づいて動いた。

そして――

『ロランの方が1枚上手だったってとこだね。ユベールも所詮ただの男だったってことだよ。まったく、可愛いね』

そもそも、クロヴィスが動いたのはサラを追っていったユベールが“怒って”いたからだ。

ユベールはずっと“嫉妬”していたのに、それをサラが気に食わないせいだと思い込もうとしていた。だが、実際は逆で。

クロヴィスが少しユベールの気持ちを促した後だ。おそらくユベールは認めたくない気持ちとの間で揺れていた。

だから、衝動的な行動に出ることもあるだろうと警戒していたのに。

ユベールの部屋に辿り着く前にロランに捕まってしまった。

ロランは力がないなどと言われているけれど、それはユベールと比べてというだけであって、普通の基準で言えば王家の跡継ぎとして問題なく相当の力を持っている。クロヴィスが彼を凌ぐことなど無理な話だ。

今朝、ようやく目を覚ましたときにはすでにすべてが舞台を降りた後だったというわけだ。
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