ふたり輝くとき
「とにかく、状況を整理しなくては」
クロヴィスは長い息を吐き出して椅子に腰掛けた。
『ロランに煽られて、ユベールはサラにパラリージを飲ませたみたいだった。だからロランも“サラ”を使ってきた』
本物のサラの気の流れが止まって、誰も感知できなくなった。だから城内にサラが2人いても気づく者はいない。
『もちろん、本物のサラはユベールと一緒に部屋にいた。偽者の方はアドリーヌだ。アレはブノワの娘でしょ?』
クロヴィスは思わず舌打ちをした。
ブノワ家は変化の呪文を得意とする一族で、代々その当主は極秘部隊を統括する任についてきた。先ほどもクロヴィスはアドリーヌの父親に会ってきたのだ。
変化の呪文はその名の通り、他人の姿を真似る呪文である。普通、呪文を使うときに気を練れば呪術者の気が感知されてしまうものだが、ブノワの人間はそれを克服した。
つまり、彼らは変化の呪文を使うとその“気”までも変化させてしまうということだ。
しかし一族の者は総じて短命で、その術の裏に秘密があることは容易に想像がつく。禁術に値する呪文か、薬か……いずれにせよ人の身体に悪影響を及ぼすものだ。
もちろんダミアンもそれには気づいているけれど、負の産物はすべてブノワ家へ、自分には利益のみが入ってくるという安易な考えによって何も言わない。それどころか、通常の俸給の倍ほどの額を彼らに払って繋ぎ止めている。
今回それが災いしたことにも気づいていないだろう。
「ロラン様に堕とされたということですか……」
彼女はユベールに媚を売っていたけれど、そこにあるのは愛でなく欲――国王の正室という地位が欲しいだけだ。ロランにそそのかされて計画に加担したのだろう。
クロヴィスは長い息を吐き出して椅子に腰掛けた。
『ロランに煽られて、ユベールはサラにパラリージを飲ませたみたいだった。だからロランも“サラ”を使ってきた』
本物のサラの気の流れが止まって、誰も感知できなくなった。だから城内にサラが2人いても気づく者はいない。
『もちろん、本物のサラはユベールと一緒に部屋にいた。偽者の方はアドリーヌだ。アレはブノワの娘でしょ?』
クロヴィスは思わず舌打ちをした。
ブノワ家は変化の呪文を得意とする一族で、代々その当主は極秘部隊を統括する任についてきた。先ほどもクロヴィスはアドリーヌの父親に会ってきたのだ。
変化の呪文はその名の通り、他人の姿を真似る呪文である。普通、呪文を使うときに気を練れば呪術者の気が感知されてしまうものだが、ブノワの人間はそれを克服した。
つまり、彼らは変化の呪文を使うとその“気”までも変化させてしまうということだ。
しかし一族の者は総じて短命で、その術の裏に秘密があることは容易に想像がつく。禁術に値する呪文か、薬か……いずれにせよ人の身体に悪影響を及ぼすものだ。
もちろんダミアンもそれには気づいているけれど、負の産物はすべてブノワ家へ、自分には利益のみが入ってくるという安易な考えによって何も言わない。それどころか、通常の俸給の倍ほどの額を彼らに払って繋ぎ止めている。
今回それが災いしたことにも気づいていないだろう。
「ロラン様に堕とされたということですか……」
彼女はユベールに媚を売っていたけれど、そこにあるのは愛でなく欲――国王の正室という地位が欲しいだけだ。ロランにそそのかされて計画に加担したのだろう。