ふたり輝くとき
そんなことを考えていてぼんやりしてしまっていた。それに、気になることもある。

クロヴィスが珍しくユベールを止めに来なかったことだ。

ロランからサラを奪い返してバスルームで気絶させてしまったときも、ダミアンから奪い返して理性を失いかけたときも、そのギリギリで止めに入ったのはクロヴィスだった。

最初の夜だっておそらくいつでもユベールを抑えられるように部屋の前で待機していたのだ。

思い当たることはいくつもある。

それなのに、なぜ、昨日は止めに来なかった?昨日こそ、ユベールがサラを傷つけないように止めるべきときだったのに?

(来られない、理由があった……?)

クロヴィスが任務に失敗したことはなかった。少なくともユベールが把握している限りは。ならば、それができないほどの何かが起こったと考えるのが自然。そして、そんな“何か”を仕掛けられる人物は城の中に何人もいるわけじゃない。

(ロラン……)

クロヴィスはダミアンの扱いには慣れている。彼を怒らせるような真似はしないし、それでありながらもうまく事を収めるくらいの器量は持ち合わせている。

ならば、ロランしかいない。

「ユベール様……?」

ふと、サラが頬に添えられたユベールの手に小さな手を重ねてきた。

「ん?あ、ごめん……クロヴィスにはすぐに見つかっちゃうかもって考えてた」

ユベールは誤魔化すように笑ってサラの唇に自分のそれで触れた。
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